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60秒。ここ数年、欧州の電力網の周波数は、まさにこの周期でわずかに落ち込んでいた。理由は誰にも説明できなかった。落ち込みは小さく無害だが、偶然と呼ぶには規則正しすぎる。毎分、同じ秒から始まるのだ。2026年10月30日、ドイツのユーリヒ研究センターの物理学者たちが、その答えをNature Energyで発表した。きっかけは、毎分の頭に自己テストを行う数千台のバックアップ用バッテリーだった。どれも同じ時計を読んでいるため、一斉にテストを始めてしまう。
「本当に何年もの探偵仕事でした」と、研究を率いたディルク・ヴィットハウトは研究センターのプレスリリースで語っている。ただ、最初に気づいたのは彼ではない。ドイツ最大の送電系統運用者TenneTは、このリズムを何年も前からデータの中に見ていたが、原因は分からなかった。同じリズムは、のちに英国、米国、オーストラリア、アイスランド、韓国、マレーシアの電力網にも現れた。しかも2020年春、産業活動が落ち込んだときも、リズムは消えなかった。むしろ大きくなった。
一つのはずみ車のように回る電力網
一つの建物でバッテリーが行う自己テストが、なぜ大陸全体に響くのか。それを知るには、ひとつの考え方が要る。
つまり周波数は、需給バランスを測るきわめて敏感な指標だ。その敏感さを欧州が思い知ったのは2018年だった。セルビアとコソボの対立で電力網がエネルギー不足に陥り、平均周波数は数週間にわたって49.996ヘルツあたりにとどまった。ずれはわずか1000分の4ヘルツ。それで十分だった。電子レンジやオーブンの時計は電流の振動数で時を数えるため、25か国でほぼ6分遅れになったのだ。
1分周期の落ち込みは仕組みが違う。周波数は毎分の前半に下がり、その後に戻るので、時計は狂わない。変動はごく小さく、ある1分だけを見れば、電力網がふだん見せる揺らぎに埋もれてしまう。ところが何分もの記録を重ねると、毎回同じ形が浮かび上がる。分の頭で沈み、真ん中までに回復する形だ。目には見えない。だが統計には見える。
80台の電力計と3号棟
最初の手がかりは、規則正しさそのものだった。「原因は時計で制御されている何かだと、すぐに分かりました」とヴィットハウトは言う。二つ目の手がかりは、落ち込みが国全体で観測されることだ。つまり、一つの工場や発電所では起こせない。同じ瞬間に電力を引く何千台もの機器が必要になる。
探索は足元から始まった。ユーリヒのキャンパスは、独自の送電網と「Living Lab Energy Campus」と呼ばれる実証施設を備えた小さな町のようなものだ。論文の筆頭著者カルステン・ハルトマンらのチームは、キャンパスの変圧器に80台以上の電力品質計を取り付け、2024年に数か月かけて消費電力を記録した。
1分のリズムは、どこにでも現れたわけではなかった。現れたのは、バッテリー式の無停電電源装置を経由して給電される建物だけだった。停電時にサーバーや実験室を生かし続けるあの装置である。コンピューターだらけでも、そうしたバッテリーのない建物にリズムはなかった。

次にハルトマンらは、3号棟にある1台の設備に狙いを絞った。停電しても建物を動かし続けるための、定格1.5メガワットのバッテリーキャビネットだ。バッテリーの端子では、毎分のまさに頭で短い電流のスパイクが見つかった。メーカーに確認すると、それは自己テストだった。1分に1回、管理システムがセルの状態を調べているのだ。さらにチームは、そのスパイクをいくつもの変圧器を経て、キャンパスが公共の電力網とつながる地点までたどった。
もちろん、一つのキャンパスの一台のバッテリーで電力システムが揺れるはずはない。だが今の世界にはこうした設備が無数にあり、どれも同じ秒に同じことをする。
正確すぎる時計
なぜ同じ秒なのか。ヴィットハウトは、多くのメーカーが「1分」を手頃な間隔と考え、テストを分の頭、つまり0秒に設定したのだろうと見ている。一台ずつなら、どのバッテリーも申し分なく振る舞う。
問題は時計だ。いまの機器はインターネットの時刻サーバー(ネットワーク・タイム・プロトコル、NTP)で時刻を合わせる。そのため、持ち主もばらばらな数千台のバッテリーにとって、「分の頭」はほぼ同じ瞬間にやって来る。互いの存在を知らない機械が、誰も計画しないまま足並みをそろえてしまった。著者らはこれを意図しない同期と呼ぶ。
// 1分周期の落ち込みを数字で見る
研究のプレプリントには、身近な例もいくつか挙がっている。時計をネットで合わせる「スマート」オーブンも、タイマーで動かしたときに限り、1分周期で一定のパターンの電力を消費する。キッチンマシンのThermomixは繰り返しピークを描くが、きっちり1分ではない。試したノートパソコンには1分のリズムがなかった。ヴィットハウトはここで慎重だ。エアコン、ヒートポンプ、洗濯機、食洗機も似た挙動を示すかもしれないが、まだ誰も確かめていない。
マヨルカ島という手がかり
1分のリズムが最も強いのは、欧州、米国、オーストラリアのような大規模な連系系統だ。だが決定的な証拠は、小さな島から出てきた。
地中海に浮かぶスペイン領のマヨルカ島は、欧州本土と同期していない。島の電力網は独自の周波数を保っている。2019年末の時点では、その周波数に1分のリズムはなかった。2025年には、はっきり見えるようになっていた。
その間に、バレアレス諸島は蓄電池を導入していた。
小さな揺れが小さくなくなるとき
今のところ、この落ち込みが電力網に危険をもたらすことはない。危険なレベルには達しておらず、著者らも差し迫った停電の脅威とは述べていない。彼らが心配しているのは、電力網が軽くなりつつあることだ。かつては石炭やガスの発電所の重い回転タービンが、重い車輪が段差を受け流すように、衝撃を質量で吸収していた。太陽光パネル、風力タービン、バッテリーは電子機器を介してつながり、そうした質量を持たない。軽い電力網では、同じ衝撃でも周波数は大きく振れる。
英国の数字がそれを示している。そこでは1分周期の衝撃の大きさはほとんど増えていないのに、周波数の振れは増えた。電力網が重い回転式の発電所をいくらか失ったからだ。
2020年春、週平均で見た1分周期の信号は、鉱工業生産が落ち込んだにもかかわらず、それまでの約1.3〜1.4倍に増えた。著者らはこれを、インターネット通信の急増と、こうしたバッテリーがとりわけ多いデータセンターの利用増に結びつけている。信号が4倍になったアイルランドでは、データセンターがすでに国の計測された電力の23%を使っている。
代償はすでに現実のものだ。落ち込みのたびに水力発電所のタービンは一瞬減速する。再び回転数を戻すたびに、金属の摩耗は早まる。北欧の電力網では、発電所が周波数のごくわずかな変化にも反応するため、毎分、出力を上げ下げしなければならない。著者らは、バッテリーやスマート機器が増えるにつれて揺れも拡大し続けると予想する。いつか、系統の安全性に関わる水準に達するかもしれないという。

一行で済む処方箋
対策は意外なほど簡単だ、とヴィットハウトは言う。「テストを、いつも同じ時刻に始めるのではなく、ランダムに散らせばいいだけです」。すべてのバッテリーが0秒ではなく、それぞれ別のランダムな秒に自己テストをするなら、数千の小さな衝撃は1分の中に散らばり、一つの大きな衝撃には積み上がらない。
すでに1社のメーカーは、テスト時刻をずらし、そのずらし幅を毎日変えている。ほかは今も厳密に1分周期でテストを続けており、変える義務もない。バッテリーにどの秒で自己点検すべきかを定める規格は存在しないのだ。
電力網は何十年もかけて、停電や嵐や夕方のピークを乗り越える術を学んできた。いま求められているのは、自分の仕事を時間どおりにこなしているだけの機械の、一点の狂いもない時間厳守に耐えることである。







