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Redditの1万3589人が、いま自分でレタトルチドを注射していると書いている。イーライリリーが開発中の肥満治療薬で、どの規制当局も承認していない。リリーがFDAに申請するのは2027年初頭の予定だ。ペンシルベニア大学の研究者たちは、彼らの投稿を言語モデルにかけて不調の訴えを一覧にした。いちばん上に来たのは食欲の増加。食欲を止めるために作られた薬なのに。

論文は2026年10月14日にJAMA Network Openに掲載された 。臨床試験ではない。著者らが調べたのはネット上の発言で、結果も仮説と位置づけている。それでも、公式には誰も売っていない薬の市場がどう動いているかは見えてくる。

早すぎる評判を呼んだ三重の一撃

レタトルチドは3つのホルモンを同時にまねる。うちGLP-1とGIPは食事のあとに腸から出るホルモンで、体が糖をさばくのを助ける。GLP-1は脳に「もう食べるのをやめていい」と知らせる役目もある。3つ目のグルカゴンは、体に蓄えを燃やさせる。オゼンピックの有効成分セマグルチドは標的が1つ、チルゼパチドは2つ。3つなら、空腹はもっと抑えられ、体重ももっと速く落ちるはずだ。2023年にNEJMで発表された 第2相試験では、最高用量の参加者が48週間で体重の平均24.2%を減らした。

2026年7月、リリーは2つの第3相試験の結果を発表した 。TRIUMPH-3は重度の肥満と心疾患のある人が対象で、80週間で最大22.6%の減量になった。TRIUMPH-2は、過体重で2型糖尿病のある人に薬を試した。こうした数字は、承認よりずっと前にネットで拡散した。そして、待てない人たちがいた。

ペンシルベニア大学のコンピューターサイエンス博士課程のニール・セーガルと、責任著者のシャラス・チャンドラ・グントゥクは、レタトルチド、ペプチド、減量に関するRedditの投稿とコメント14万8640件を集めた。レタトルチド自体がペプチド、つまりアミノ酸の短い鎖だ。この種の物質は「研究用ペプチド」としてネットで広く売られている。

言語モデルは、自分の注射について書いている人を拾い出し、症状を規制当局が副作用の分類に使う辞書MedDRAの用語に置き換えた。体重減少と食欲低下は薬の想定内の効果とみなし、不調の訴えには数えていない。残ったのは、少なくとも1つ訴えのある7823人だった。

モデルは投稿をどう読んだか

投稿は27のコミュニティから集めたもので、期間は2021年5月から2025年12月まで。小型モデルgpt-5.4-nanoが、本人の体験を書いているかどうかを判定し、用量・性別・年齢を抜き出し、症状をMedDRAに対応づけた。現在レタトルチドを使っていると書いたのは、4万5592件の投稿とコメントにまたがる1万3589人。100件を手作業で確認したところ、精度は高かった。想定内の効果を除くと、7823人が残った。

1位は空腹、吐き気は4位

食欲の増加を挙げたのは1336人で、訴えが1つ以上ある人の17.1%にあたる。さらに7.3%が食べ物への強い欲求を訴えた。

次に並ぶ2つは、同じリストにあるのが奇妙だ。2位は倦怠感で15.2%、3位はエネルギーの急増で12.4%。

この種の薬につきものの吐き気は、4位の11.6%にとどまった。アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション紙はある例を紹介している。27歳のカミラ・ジカレリは、ジョージア州のクリニックで半年間レタトルチドを打ち、費用は約1200ドルと見積もっている。量を減らすまで吐き気が続いたという。不眠と動悸がリストの最後を占める。

同じ手法をセマグルチドとチルゼパチドに当てると、上位は吐き気、嘔吐、消化の不調だった。レタトルチドの投稿は、食欲、睡眠、筋肉、心拍に偏っている。ただしこの比較は大ざっぱで、統計的な検定はない。

// 試験で見えたことと、Redditの声

臨床試験

TRIUMPH-2では、薬を使った参加者の27〜34%に下痢が出た(プラセボは13%)。吐き気は14〜28%。第2相では、心拍数は用量とともに上がり、24週目にピークを迎えてから下がった。薬を渡したのは医師なので、用量も中身もわかっていた。

Reddit

1位は食欲の増加で17.1%、吐き気は4位で11.6%。この割合は「訴えのある人」に占める比率で、試験の数字は全参加者に占める比率だ。比べるなら数字ではなく順位にしてほしい。瓶の中身も、ほかに何を注射したかも、誰にも確かめられない。

心拍の上昇はニュースではない。試験でも確認されている。食欲はその逆だ。TRIUMPH-2では食欲が急激に落ち、食欲低下が副作用として記録された参加者が6〜17%いた。Redditでは、食欲低下は想定内の効果として最初から数えていない。だから謎なのは、そもそもなぜ空腹が訴えの首位に来るのかだ。体重と摂食障害を研究するペンシルベニア大学のジェナ・ショー・トロニエリは、慎重にこう述べている 。レタトルチドは既存のGLP-1薬とは働き方が違う。その違いが何を意味するのか、あるいは意味があるのかは、さらなる研究が必要だ。

その名前で売られているもの

「レタトルチドにキャリアを賭ける」。ジョージア州でBalanced Bodiesクリニックチェーンを共同経営する元救急医のケント・コーエンは、アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション紙にそう語った。そこでは1コース月350ドルから。同紙は2026年10月15日、この薬を扱うジョージア州の医療機関を17か所数えた 。半数近くを医師が運営または指導している。コーエンは合法だと主張する。リリーは、消費者向けに販売すると称する者は誰であれ違法行為をしていると言う。

空腹にはもっと平凡な説明がある。著者らもはっきり書いている。注射している本人たちが、中身を知らないのだ。ネットでは「研究用のみ、人体摂取不可」というラベルつきで売られている。消費者団体パブリック・シチズンは2026年6月、FDAが2024年以降こうした販売業者に14通の警告書を送ったのに、5月の時点でなお8業者がレタトルチドを売っていたと報告した 。何百人ものアフィリエイト系インフルエンサーが、買い手をそこへ送り込んでいる。

フォークとナイフを添えた空の皿。縁が目盛りのように刻まれ、針が限界まで振り切れている
フォークとナイフを添えた空の皿。縁が目盛りのように刻まれ、針が限界まで振り切れている

闇市場のレタトルチドはどれくらい効くのか。分析会社のnferenceが健康記録を調べると、試験の外でレタトルチドを手に入れた人が378人見つかった。多くはネット業者や調剤薬局経由だ。プレプリントによると 、6〜12か月で減った体重は7.2%。試験の参加者は15.5%だった。査読はまだ受けていない。瓶の中身がラベルより少ないか、まったく別のものなら、空腹の謎は謎でなくなる。ただし証明されてはおらず、著者らが挙げる説明のひとつにすぎない。

科学者が他人の愚痴を読む理由

アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション紙が引用するFDAのデータでは、2024年以降、レタトルチドに関する有害事象の報告は70件を超え、2026年には死亡4件が含まれる。報告は未検証で、因果関係を示すものではない。闇市場の購入者には臨床データがなく、あるのは本人の証言だけだ。

情報源としてのRedditは、すでに実績がある。2026年4月、同じ研究グループはセマグルチドとチルゼパチドを使う約7万人の投稿40万件超をNature Healthで分析した 。そのうち4%近くが月経不順に触れていた。のちに別のチームがFDAのデータベースを調べると、同じ訴えが不釣り合いに多く見つかった。

そこで著者らは医師に呼びかける。承認されていないペプチドについて、患者に批判せず尋ねること。中身が不明だと伝えること。副作用の報告は、FDAの報告システムMedWatchに出すこと。共著者のライル・アンガーは線引きをはっきり言う。研究者には、レタトルチドがこれらの症状を引き起こしているとは言えない。

この投稿に出てくる空腹が、月経の訴えと同じくらい確かなシグナルだと判明すれば、それは薬そのものより、瓶の中身を語っているのかもしれない。いまのところ、「人体摂取不可」と書かれたものを注射する感覚を知っているのは、あの1万3589人だけだ。そして彼らでさえ、瓶に何が入っていたのかは言えない。